わが家の億万長者
フネが自己啓発本のようなものを読んでいる。波平の横で。
「成功する人は違うわね」
と、つぶやくフネ。波平に聞こえるように言っていることは確実である。妻から「成功していない男」認定を受けてしまった波平であったが、そんな彼もタイミングさえ逃さなければ億万長者になる未来はあったのだという。かつて手放してしまった土地や株券を思い出す波平。
その独り言を聞きつけたカツオ、急に礼儀正しくなって、波平からまんまと小遣いをGETする。
しかし、カツオはこの時見てしまった。波平の財布に千円札2枚しか入っていない光景を。
部屋に戻り、「うちは想像以上に厳しい状況なのかもしれない」と悩むカツオ。実際は、波平が取引先に持って行く手土産代を立て替えていて偶然手持ちが少なかっただけだったのだが、そんなことカツオが知るよしもない。ワカメに金を借り、小遣いのお釣りを返そうとする。その額220円。そんなのかえって惨めではないか。
家計を余計に心配するカツオだが、思わぬ方向に思考が転がる。
「大学は浪人しないでストレートで、国立に入る。早く言えば東大だね」
早く言い過ぎである。まぁ、小学生は国立大学と言ったら東京大学くらいしか知らないだろうし、無理もない。問題なのは、この年齢から浪人を視野に入れていたことである。お前はジンロク(伊佐坂家の長男。浪人生)を見て何とも思わないのか。
考えを改めたカツオ。勉強と節制に努めていく。水道を出しっぱなしにするマスオを注意し、学校で花沢家の経済状況を聞く。どうやら花沢の父の財布には1万円札が何枚も入っていたようで、ますます心配になるカツオ。
その危機感はワカメにも伝播する。おやつに出されたケーキをみて、「贅沢すぎない?」と一言。事実、それは普通に贅沢すぎる。
中島に遊びに誘われたカツオは、勉強のためにきっぱりと断る。
「中島。僕は中島の兄貴みたいに、のんびり浪人はしていられない身なんだ」
とトンでもないことをいうカツオ。というか、1つのアニメに浪人キャラは2人もいらないだろ。
帰宅後、おやつを断り勉強を始めるカツオ。扉の前には「面会謝説」と張り紙を貼るが、ご覧の通り「説」と「絶」を間違えるファインプレー。東大への道は長い。
一方波平は、花沢の父と一緒に酒を交わしていた。カツオが節制に努めている話になり、
「良い息子さんをもって幸せです」
「人間的には満点じゃないですか」
と温かい言葉をかける花沢父。こりゃあ財布に万札の束が生まれる訳だ。ハァー感心。
波平が帰宅してもまだ勉強を続けるカツオ。しかし、ここまで長いこと机に向かったのは初めてな様で、目が回ってしまっていた。その様子を見て、波平はすっかり気を良くする。 別の日、波平はカツオに預金通帳を見せる。カツオが大学に行くために、しっかり資金は貯めているから安心しろ、と波平。なんて素晴らしい父親なのだろうか。こんなの、波平の株が爆上がりしてトレンド入りじゃないか。
しかし、肝心の中身は見せない。
「見せると気が大きくなるからね」
と、フネが言う。「そんなに貯まっているのか」と驚くカツオ。
部屋に戻り、カツオはどれほどの額が貯まっているのか考察を進める。ブツブツと独り言を続け、「100万円」と発言したところで
「100万円がどうかしたの?」
とワカメが反応する。彼女の大金ラインは100万円のようだ。
そんなワカメに対し、カツオは
「頭が高い!」
と一言。事の詳細を聞き、「良かったわね、浪人になれて」と予備校前では絶対に口にしてけない爆弾発言をかます。
お金のことばかり考えて、頭がぐるぐると回っているカツオ。お口直しに、明日から漫画をたんまり読むようだ。
強気でいこう
タイトルから、マスオ主役回であることは察しがつく。案の定そうであった。
マスオ、会社にて偽波平のようなビジュアルの課長から、大量の仕事を渡される。アナゴが登場し、
「気の良いとはいえ、そのままじゃこの激しい競争社会を行き抜けられないぞ」
と言う。
マスオは結局残業する羽目になり、遅い時間に帰宅。そしてそんな遅い時間に、なんとノリスケ登場。さすがに迷惑でないのか。
彼もそうとう厳しい状況に追い込まれていたようで、遅い時間に伊佐坂先生に原稿の依頼をしに行ってきたらしい。理由は、別の先生の原稿が病気によって間に合わなくなってしまったからだそう。
ノリスケはマスオと対極の、強気の人間として描かれる。
「態度は低姿勢、気持ちは強気に!」
となかなか参考になりそうなスローガンを言うが、波平が「それは慇懃無礼(いんぎんぶれい)だ」と随分と知性の要るツッコミをする。
ノリスケに感化され、何事も強気でいくと決心したマスオ。また偽波平から大量の仕事を頼まれても、
「これ以上の仕事はお受けできません!」
と拒否。アナゴがウインクをする。あまり気色のよろしくない2人であるが、これからは共に強気で生きていくようだ。
夕方、「明日やれる仕事は明日やろう」と残業をせずに帰った2人。丁度その後、偽波平が登場。おごりで皆を飲みに連れて行ってくれるつもりだったようで、マスオ・アナゴペアはその輪から外れてしまった。
居酒屋にて、塩を頼んだのにタレの焼き鳥がきた事にも強気で注意。しかし、塩も美味しそうだったと注文を訂正する。面倒な客である。
帰宅したマスオ。散々な点数であったテストを波平に見せるかどうか悩んでいたカツオに、「強気でいけ」と背中を押す。
しかし、カツオは普通に怒られる。
マスオの強気ムーブは止まらないが、ずっとどこか上手くいかない。
塀を超えて飛んできた空き缶が頭に当たり、その家にキレ散らかしてやろうと意気込むマスオであったが、美人のお姉さんが出てきたので怒りがおさまる。
公園でカツオたちから「ボールが人の家に入ってしまった」と助けを求められ、我に任せろと言わんばかりに果敢にその家に向かうマスオ。しかし、その家の家主は近所でも有名な怖いオジさんであることを察知。急いで家に戻りウイスキーを飲むが、今度は酔いが回って、脳に浮かぶそのオジさんのイメージが3つに増えてしまった。よく分からないメカニズムである。
結局、強気は疲れるようだ。マスオは以前のように気を遣って生きていこうと決める。
2本の赤い傘
ワカメ、新しくレインコートを買って貰い、外で友達に自慢する。そこに丁度雨が降ってきたが、ワカメは急いで家に避難。新しいレインコートが汚れるのが嫌だったそうだ。それじゃあ本末転倒だ、という綺麗な話である。サザエさんを見ていると、基礎の大切さが身に染みて感じられる。
晩ご飯中にその話になり、サザエは
「お気に入りだからこそ使ってあげなきゃ」
とアドバイス。サザエにも、気に入っている赤い傘があるらしい。
ワカメも、レインコートを使うと決心。勝手にしてくれ、と思ってしまった。しかも驚くのが、今後このレインコートは登場しない。
後日、雨の日に図書館で「集中力を高める本」を借りるサザエ。似たようなタイトルの文庫本がこの世には大量にある。
図書館を出ると、雨であった。傘立てからお気に入りの傘を取り出し、ご機嫌に帰るサザエ。しかし道中、その傘が別の人の傘であったことに気づく。持ち手にはしっかりと「N」のイニシャルが。もう図書館も閉まっており、今日のところは人の傘をさして帰るしかない。
なんとか持ち主を見つけて傘を返したいサザエ。カツオはイニシャルNから、勝手に想像を膨らませていく。
「イニシャルをつけるくらいだから、物を大切にする素敵な人だ」
「赤い傘なんて素敵だからきっと持ち主も素敵な人だ」
「図書館にいたのだから、読書が好きな素敵な人だ」
こうやって勝手に人に期待をして勝手に失望するのが、磯野家の良くないところだ。
後日、図書館に傘を返しにいくサザエ。話を聞いてみると、傘がなくて困っていた人はいなかったらしい。イニシャルNの人物もまた、サザエの傘を自分の傘と勘違いして持って行ってしまったようだ。
ショックを受けるサザエ。そんな様子を見て、「なんとかして姉さんの傘を探そう」と意気込むカツオとワカメ。
街で赤い傘をさしている人に、
「すみません、それは本当にあなたの傘ですか」
と声をかけていく。こんなドッキリみたいな声かけ、やめて欲しい。ある程度の無礼を払った体当たり作戦だったが、イニシャルNは見つからない。
あるとき話しかけて、振り向いたのはノリスケであった。イニシャルN。正体はノリスケだったようだ。何だか元気がなくなる展開である。
結局、サザエの傘とノリスケの傘が入れ替わってしまっていた、というイッツアスモールワールド的な話であった。何故か当たり前のように磯野家で晩飯を食うノリスケ。傘にイニシャルが入っていたのは、ノリスケが傘を間違えてばっかりなため、わざわざタイコが入れてくれたからだそうだ。
それなのに傘を間違えたノリスケ。反省し、傘をさして磯野家を出るが、またサザエの傘と間違えてしまった。お茶目ねー。
じゃんけん
グーであいこでした。