イクラはサイン中
油性ペンを手にしたイクラが、至る所にサインを書きまくる。サインと言っても、イクラの年齢で書けるのは家庭科室に落ちている糸ゴミのような形態をしたちぢれ文字であり、文字としての様相は全くないのであるが、
「これは将来大物になるぞお」
と興奮しているノリスケが微笑ましい。
サインと聞くと、自分も誰かにサインを渡したくてうずうずした過去を思い出す。道で若者に
「あ、大越さんですよね……?」
と声をかけられ、私は
「まぁ、そうですけど(照)」
とスマートに返す。サインを貰おうとするも、相手はそう都合良く色紙など持っていない。半ばパニック状態のまま
「ここにお願いします!」
とスマホを渡され、私はでかでかと「大越★」と書くのだ。
また、私はもっと同級生のサインを貰っておけば良かったと後悔している。みんながいつどのタイミングで有名人になるか分からない。小学校のころからコツコツとサインを貰っておけば良かった。そうすれば、まぁどういった手段を用いるかは言及しないが、将来私の手に大金が降ってくる可能性は大いにあるわけだ。将来手にする大金の事を考えれば、サインを集める苦労など安い物である。
話が逸れた。サザエさんの感想を書こう。
イクラは完全に調子に乗った。結果、寝ている波平のおでこにサインを書いてしまった。「おじいちゃんに書いたです!」
というタラオの絶望的発言が印象的。あまりにもナイス過ぎる行動に、おそらく瞬間最高視聴率を叩き出したのではないか。
波平が起きる前に、除光液でサインを消そうとするカツオ。目に入ったらどうするのか。しかし波平は目覚め、散歩に出かけてしまった。カツオは帽子を被らせて誤魔化そうとするが、検討空しく波平に気づかれてしまう。
「こ、これは……!」
と徳川埋蔵金でも発見したかのようなリアクションをとる波平。ああ愉快。
結局、ハンドクリームでサインは落ちた。
ネクタイで気分上々
そういえば、最近気分上々してないなぁ。どこか旅行にでも行こうかなぁ。
会社にて、偽波平(上司)のネクタイを褒めちぎるマスオたち。どうやら、デパートのネクタイ売り場で「早乙女」という店員に選んでもらったようだ。当たり前のように書いたが、店員にネクタイを選んでもらうなんて経験、自分は一生ないんだろうなぁ……。そそくさと適当に選んで、いち早く売り場から脱出することに努める気がする。そうしてそのまま日々は過ぎ、私は老いていき……。気分下々である。
その話を聞いたカツオは、
「早乙女さんかぁ。素敵な人なんだろうなぁ」
と女性を想像する。この時点で、何となく早乙女が男だという展開は分かる。
休日、マスオ・サザエ・タラオのトリオはデパートに向かう。しかし、サザエは貴金属コーナーの虜になり、タラオはおもちゃを買ってくれとせがみ、迷子になり、ネクタイ売り場までは中々行けない。
やっとの思いで到着し、「早乙女」を発見。なんと男性だった。しかも、タラオを迷子センターまで連れて行ってくれたのだそうだ。
マスオは無事オシャンなネクタイを手に入れ、気分は上々。私は自分の薄暗い将来を考えて、終始気分は下がり気味であった。
暑さゆえの過ちだから
暑さに磯野家がやられる話。
波平、散歩をしてやられる。道行く人がビールジョッキに見える。喫茶店でビールをのむ波平。伊佐坂が発見。
暑さに磯野家がやられる話である。喫茶店にご近所の婦人方が集合したり、暑い中マスオ・サザエ・タラオ・カツオが閉め出されたりするのだが、結論としては
「波平が悪い」
ということであった。
本編は、まぁ日常回であったのだが、話の最後に挿入されたエピソードが衝撃的すぎたので共有したい。
暑い中外を歩く波平。
「近頃はこの暑さでだらけてしまっている。気をつけなければ」
と決意を新たにして、家に帰る。
居間に入ると、みんなは畳の上でグウスカ寝ている。自分はついさっき決意をしたのに、この体たらくは何だ。
「みんな起きろー!」
と大声をあげる波平。
しかし、そこは磯野家ではなかったのだ。暑さで頭がやられ、人の家を自分の家だと思いこんで上がり込んでいたのだ。
ホラーである。自分でタイピングして思わず寒気がした。他人の家に上がり込んだら、常人は「あぁここは他人の家だ」と気づくのである。気づかないと、この人間社会は成り立たないのである。
この衝撃エピソード、本編にしないのがもったいない程である。警察に通報され、波平の事情徴収、磯野家の混乱、ノリスケの裏切りなど、壮絶な人間ドラマが繰り広げられるポテンシャルをもったエピソードである。だって波平がしたのは犯罪行為なのだから。1時間はいける。「君たちはどう生きるか」と十分戦えると思う。
じゃんけん
チョキで負けました。