バイト先に向かう道中、とんでもなくグッドなビジネスを思いつきました。あまりにグッドさに全身に稲妻が走り、そのまま記事のタイトルにしてしまいました。
そう、私が思いついたのは「クリスマス屋さん」というビジネスです。……ビジネス、というと少し胡散臭さを感じてしまうのは、私が田舎者だからでしょうか。ここからは「お店」と呼ぶことにしましょう。
それでは、私の画期的なアイデアを余すことなくご紹介します。あぁ脇汗が止まらない。
クリスマス屋さんとは、その名の通り、「クリスマスを体験することができるお店」です。そのお店の中はいつ行っても「冬」。冷房をガンガン効かせた店内で、クリスマスの一日を体験できるのです。
冬以外の季節に営業しますが、やはり稼ぎ時は夏でしょうね。半袖で過ごすのが当たり前になり、家に帰ったときの蒸し暑さに顔をしかめる日々が続いたとき、人間は冬が恋しくなります。かくいう私がそうでした。ついこの前まで夏の到来を待ち望んでいたのに、いざ暑くなれば「冬が良かった」と駄々をこねる四季折々人間。だから「クリスマス屋さん」なんてことを考えたのです。
先ほど説明した通り、クリスマス屋さんの中は常に冬が再現されています。半袖のままで過ごしていたら風邪をひきますので、ぜひ冬服をご用意ください。もちろんレンタルも可能です。ダウンからちゃんちゃんこまで、モコモコの上着を幅広くとり揃えております。
クリスマス屋さんの設備紹介といたしましょう。クリスマス屋さんでは、カラオケボックスのようにお部屋がいくつも用意されています。それぞれの部屋に再現されているのは、クリスマスの日の室内。生活感が漂う少しだけ散らかった室内は、一つ一つが映画のセットのようであると言っても過言ではありません。ちなみに室内にあるものは全て備品です。勝手に持ち帰った場合はスタッフ総出で取り押さえますので覚悟しておいてください。
一概に「クリスマスの部屋」といっても、具体的にイメージする室内は人それぞれ違っていることと思います。畳の上にコタツが置かれて部屋の隅ではミカンが入った段ボールが置かれている……という日本らしい室内を想像する方もいれば、暖炉の前にユラユラ動く椅子が置かれ、サイドテーブルには編みかけのマフラーとココアが置かれているような北欧チックな室内を思い浮かべる方もいるでしょう。
ですが、ご安心ください。クリスマス屋さんでは、皆さまのあらゆる要望にお応えできる部屋をご用意しています。日本的な部屋も、北欧チックな部屋もございます。七面鳥がドドンと置いてあるようなアメリカのクリスマスも、もちろんいけます。一人暮らしの大学生の部屋を再現したお部屋もございます。ぜひお友達と利用して、
「クリスマスだってのにお前らと過ごすのかよ」
「こっちのセリフだわ」
「来年は彼女つくるぞ」
という会話をお楽しみください。「これはこれで青春だよね」とお客様に好評です。チキンはファミチキです。こちらも「チキンを食べるっていう行為をタスクと捉えてる感じがしてリアルだよね」と大変好評です。
窓の外の風景も、しっかりとクリスマスの風景を再現したセットを用意しています。昼も夕方も夜もOK。日本的な部屋の外には雪の積もった屋根の見える住宅街を、北欧チックな部屋の外には一面の雪原を。一人暮らしの大学生の部屋の外には、カップルしか寄せ付けないという雰囲気のキラキラした街の風景をご用意しています。追加料金になりますが、人工雪を降らせることも可能です。「ボボボ」という機械音がうるさいのはご愛敬。
さぁ、ここまで読んでみて皆さん、どうでしょうか。かなり魅力的な商売じゃないでしょうか。夏の暑い日が続くと、どうしても冬が恋しくなりますよね。
「寒いくらいが丁度いいんだよなー」
「冬はいいよ。いくらでも上に羽織ればいいんだもん。でも夏は脱いだって暑いもんなぁ」
そんな文句を垂らしながら妥協案のガリガリ君をかじっているそこのアナタ! 何をチンタラしているんですか! 現代の科学技術を駆使すれば、冬を再現することなんて簡単に出来ちゃうでしょう!?
ならば作りましょうよ! 1年中、いつでも訪れることが出来る「冬」を!!
……完璧。PR完璧。出資なんて一瞬で集まるぞこんなの。クラウドファンディングなんか始めたらエラいことになる。末代まで遊んでくらせる。
しかし奥さん、まだございます。クリスマスと言ったら、「あのお方」が欠かせませんよねぇ。ひげ面で、厚着の。まだ登場してませんよぉ。忘れたなんて言わせませんからねぇ。
お客さんは、部屋に一泊することができます。室内にはベッドや布団が用意しており、パジャマを着て就寝できます。そして、すやすやと眠っている真夜中に、彼は登場します。
そう、サンタさんです。専属のサンタさんが、アナタの枕元にプレゼントを置きにやって来てくれます。システム上プレゼントの指定はできませんが、すごく高級なおかきとかを置いていってくれます。まさにクリスマスの醍醐味!
もちろん、サンタさんを呼ぶには別途料金がかかります。トナカイも呼ぶとなったらそれなりの大金を払うことを覚悟しておいてください。トナカイにとって狭い室内はストレスです。しかも真夜中に起こされて、赤い服着たおっさんと各部屋を回れと言われているのです。それはそれはご立腹です。そいつを我が身一つで制御しなければいけないサンタの気持ちもくみ取ってやってください。あまりの痛々しさに、いくらでもお金を払ってあげたくなるでしょう。
以上が、私のとっておきのアイデア「クリスマス屋さん」の全貌です。いかがでしたでしょうか? クリスマスを想像して、少し気分がウキウキしましたかね? お金でクリスマスを買う時代も、そう遠くないですよ。
今回は少し妄想が過ぎました。すこし反省しております。……と言いましても、こういうお店って案外あったりしないのでしょうか。室内を冬並みの気温に保つ施設なんて、スケート場しかり屋内スキー場しかり、いくらでもありますからね。あとはそこにクリスマスを再現するかしないかってだけの話で。もしかしたら既に似たような商売をしている人がいるかもしれませんね。
もしいたら、聞きたいですね。トナカイの飼育法。