逃げてドラ猫 #17「究極の問い」

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「もしも、ある1つの飲食店のメニューを一生無料で食べられるとしたら、どのお店にする?」

 


という究極的な問いが、この世にはあります。私も友人達と議論を交わしたことがありました。考えたところで人生には何の足しにもならないのですが、あまりにも浪漫に溢れた問いのため、つい人は真剣に考えてしまうものです。

 


 ちなみに私はいつも、「マクドナルド」と「松屋」の2択で迷います。それまではトントン拍子で考えが進んでいくのですが、その2択に到達した途端、頭の回転がピタッと止まってしまうのです。まるで共通テストの数学を解いているかのような気分です。あれって途中まではスラスラ解けるんですが、いきなり難易度が跳ね上がってペンが止まるんですよね……。頑張れ受験生。

 


 マクドナルドも松屋も、「店舗数の多さ」と「提供の早さ」という点が共通しており、私の戦略がうかがえます。

 


 一生無料で食べることができるなら、なるべく回数を稼ぎたいもの。「せっかく無料で食べれるのに四国にしかお店がない」みたいなことになれば、一生無料のメリットを生かし切れていません。ここで判断を誤るような人はきっと、危機的状況下で限りある保存食をバクバク食ってしまうような無神経な人に違いありません。

 


 店舗数が多ければ、お腹が減ったときにちゃちゃっと無料でご飯を食べることができますから、一生無料のうまみを最大限に味わうことが出来るのです。

 


 あと、提供の早さは同じくらい大切です。いくら無料で食べられるとはいえ行く度に行列ができているようなお店だったら、行く気が失せます。いざ行列に並んでみたとしても、「無料だからという理由だけでここに並んで……。俺には、お金よりもっと大切にしないといけないものが、あるんじゃないのか……?」

 


と余計なことを考えてしまいそうです。ようやっと料理を食べたとしても、それを素直に「美味しい」と言えるかは微妙なところです。 そう考えるとやはり、「提供の早さ」は大切な指標と言えます。

 


 そうしてマクドナルドと松屋の2つに絞られたのですが、実は松屋の店舗数ってマクドナルドの国内店舗数の半分ほどしかないんです。それでも十分多いのですが、単純な店舗数の多さで言えばマクドナルドの勝ちです。

 


 それなのに何故、松屋がここまで粘るのか。それは、「なんとなく健康そう」だからです。マクドナルドを毎日食べる人と松屋を毎日食べる人とでは、後者の方が圧倒的に健康そうな気がします。なんか、松屋の方が能力値を示す五角形がきれいで大きい気がしてしまう。定食メニューなんて栄養バランスがしっかりとれているでしょうから、食えば食うだけ健康成人男性まっしぐらな気がしてワクワクします。

 


 でも、ポテトを腹一杯食べたいんだよなぁ~。私がこの世で一番好きな食べ物はフライドポテトです。とりわけマックのポテトは別格。イオンモールにあるキッズパークのボールプールを全部ポテトにして、潜って中から食い尽くしたい。マックの紙袋を開けたときの香りが出るハンディ扇風機とか欲しい。

 


 健康を考えたら松屋ですが、「食いてぇ!」という熱量を考えたらマクドナルドになってしまいます。結局、優柔不断な私はどちらか一方に決めきれないのです。こういう状況に特化した占い師さんとかいないかな。水晶を覗いて「あー、あんたはマックだね」とか言われたらキッパリと決めれるんだけど。 

 

 

 このように、やはりこれは究極の問いなのです。皆さんの回答をお聞きしたいところです。「これだぁっ!」と確信する答えがあるかもしれませんから。

 


 しかーし! 私は新たな「究極の問い」を思いついてしまいました。今日はこれを書きたくてウズウズしていたのです。自分で問いを思いつくのってこんなに気分が高揚するんですね。「リーマン予想」を思いついたリーマンもこんな気分だったことでしょう。研究者でもないのに同じ気分を味わえて、私は幸せ者です。

 


 私が思いついた「究極の問い」は、こちら。「もし、ある1つの飲食店をバイキング形式で楽しめるとしたら、どのお店にする?」

 


 さぁ、お考えください! また食いもんの話でうっとおしいとお思いでしょうが、すみません無視させていただきます。

 


 先ほどは「一生無料」でしたが、こちらは「バイキング」です。料金のことはいったん考えずに、「どの店の料理をバイキングで食べたいか」ということだけを考えてください。

 

 私の場合ですが、この問いになると、先ほど上げた「マクドナルド」や「松屋」は候補から外れてしまいます。マックがバイキングだったところで、結局いつも通りバーガーとポテトとドリンクのセットを作ってしまいそう。ポテトをいくらでも食べる事が出来るのは魅力を感じますが、バイキングで一品だけを食べまくるってどうなのでしょうか。「あんた、本当にそんな生き方でいいわけ?」と言われたら私は黙ってしまいそうです。

 


 松屋のバイキングは、正直全く魅力を感じません。美味しいはずなのに、何故でしょうか。大きなトレイに牛めしの具が用意してあって、それを好きなだけご飯の上に乗せるシステムが想像できますが、ちょっとインパクトに欠けます。これがイクラとかだったら「うぉー!」となるのでしょうが、牛めしだったら「はは……」なのです。これは決して牛めしが美味しくない訳ではないのです! ただ、牛めしにバイキングは荷が重いんです……。

 


 お客さんはきっと、

 


「バイキングに来て食べるほど、俺は牛めしが好きだったっけ……?」

 


と自問自答を繰り返してしまうのです。そもそもバイキングで「丼」って重いんですよねぇ。

 


 では、この問いへの回答を考えていきましょう。バイキングにするからには、「メニューが豊富」で、「料理が軽め」で、「ワクワク感に溢れている」ことが求められるのではないでしょうか。やはりバイキングに訪れたら「ようし、この料理全部食べよう!」と気合いを入れたいですからね。この3条件は必須と言えるでしょう。

 


 そして、私はこれらの条件をバッチリ満たす飲食店を発見したのでした。偉業と言えます。

 


 そのお店とは、「サイゼリヤ」です。

 


 おい待ていっ、と思ってしまう方も多いと思います。サイゼリヤといえば、その破格とも言える価格設定。この値上げラッシュの時代にみせる圧倒的な低価格は、本当は経営が破綻しそうなことに社長が気づいていないだけなのではないかと心配になってしまうほど。そんなお手頃なお店、わざわざバイキングで食べることないんじゃないか……。もちろん、私の頭にもその疑問は浮かびました。

 


 しかし改めて考えると、私はサイゼリヤのメニューをいくつも食べたわけではないことに気づいたのです。もちろん私も大学生風情ですから、何度もサイゼリヤには足を運びます。ですがいくら安いといえど、2品頼んだらそれなりの値段になります。結局注文するのはドリアかパスタのどちらかに限られてしまい、「爽やかにんじんサラダ」のようなサイドに徹したメニューはあまり頼んだことがないのです。

 


 そういうメニューを、私はバイキングで食べたいのです。

 


 想像してみてください、サイゼリヤの全メニューが並んだバイキングを……。

 


 暖かな照明の下、沢山のドリアが光っています。やはり「ミラノ風ドリア」は一番の人気メニューのようですが、バイキングとなると「半熟卵のミラノ風ドリア」の方が選ばれるようです。みんな、半熟卵をいつも我慢していたんですねぇ。

 


 サラダのコーナーでは新鮮な野菜たちが並び、

 


「ちょっとお父さん、小エビ入れすぎだよ」

 


という声が聞こえます。小エビの量を自分で決めれるなんて、最高。

 


 意外と人気なのが「エスカルゴのオーブン焼き」です。量が少なそうで選択肢から外してしまいがちですが、やっぱりみんな気になってたんですよ。

 


 そして一番の目玉が、「カリッとポテト」の山です。サイコロの形をした小さなポテトが、まるでピラミッドのように高く高く積み上がっています。その横には「ポップコーンシュリンプ」の山も……。これ、いくらでも食べていいんですよ。

 


「こんなに食べたら太っちゃうワ」

 


 マダムの嘆きが聞こえてきます。本当は嬉しいくせにっ。

 


 どうでしょうか、サイゼリヤのバイキング。メニュー表を開いたときのワクワクがよりエネルギーを増して迫ってくる感じがありますね。

 


 サイゼリヤは、自信を持って言うことが出来る回答の1つです。

 


 実は、まだあります。バイキングにしたいお店。でも、こちらは自信を持って言うことが出来ません。

 


 そのお店は、「丸亀製麺」です。

 


 理由は、「うどんの上に全部の天ぷらをのっけたいから」。ただそれだけです……。多分、1杯食べたらもう要らなくなると思います。それに僕、天ぷらみたいな油っこいものをバクバク食べれるような胃でもなくなってしまいました。

 


 でも、見たいんです。全のっけわんぱくうどん。先ほどの3条件を無視した子供じみた理由ですみません。しかし、この勇気ある脱線こそが「究極の問い」の面白いところなのです。
 

 


  



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