逃げてドラ猫 #21「ラーメンの汁問題」

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私は食事の際、よく汁を飛ばします。


この書き出しだとまるで私は食べ方が汚い人間だと思われてしまいそうですが、それは違うと言わせてください。汁を飛ばすと言っても、スプリンクラーのように全方位へ飛ばすわけではありません。辺りを汚さないように細心の注意を払って食事をするのですが、ふと気を抜いた瞬間に「ピッ♡」と汁が飛んでいってしまうのです。


危険なのは、やはりラーメンを食べているときです。勢いよく麺をすすれば確実に汁が飛び散り、私の服を汚してきます。そのあと汁が飛び散った服を着て街を歩くのは「私はラーメンを綺麗に食えない人間です」と自己紹介しながら歩いているようなもので、如何せん小っ恥ずかしいです。


しかも不幸なことに、私の好きな色は白。持っているのは白い服ばかり。「清潔」「純粋」といったイメージが連想される白ですが、ラーメンの汁が飛び散った途端「不潔」というイメージしか連想されません。汁が飛び散っただけでここまで株が大暴落するとは。汁側の視点だったらさぞ楽しいでしょうね。


「おお! 白Tシャツだ! いけぇ! 飛べええ!」


みたいな具合に、人様の服を汚しているのでしょうか。いっそバチでも当たれと思うのですが、ラーメンは美味しいのでその分プラマイゼロなんですね。世の中ってうまく出来てます本当に。


いつも汁を飛ばすのが嫌なので、飛ばさないように食べる方法を見つけようと、日々試行錯誤しています。


まず考えたのは、「麺をレンゲに移動させてからすする」という方法。器から直接すするのではなく、一旦レンゲの上に乗せて汁気を切ってからすするのです。


これは非常に有効な作戦に思えました。「汁があるから汁が飛ぶ。なら、汁気を無くせば汁は飛ばないに決まっている」と推理してさながら名探偵気分で麺をすすったのですが、飛びました。レンゲの上に残った汁気でも十分に汁は飛ぶのです。しかもレンゲを中継地点にすることで、器から直接すするよりも汁と服との距離が近くなりよけいに汚しやすくなるという始末。努力がここまで無駄になることがあるんだ、とビックリした覚えかあります。


では作戦変更です。次に実行したのは、「麺を口に入れたら、箸で麺の下の方を持ち上げる」という方法です。文章では分かりづらいでしょうから、図をご覧ください。


これは友人から教わった方法ですが、なるほど確かに理にかなっています。汁が飛ぶのは麺の端っこが汁から出る瞬間。中華麺のちぢれが麺を回転させ、そのせいで汁がまき散らされるのです。ならば、それを予防すればいいだけ。こんなにシンプルな方法があったのか、と目から鱗と言わんばかりの驚きと共にすすってみましたが、飛びました。なんか、普通に飛びました。


もはや八方塞がりだと感じた私は、新たな作戦を実行しました。それは「外食でラーメンを食べるのは避ける」という作戦です。しかしこれは作戦ではなくただの敗北宣言。そうです、私は敗北したのです。ラーメンに負けた人類として末代まで笑いものにされる覚悟を持っての敗北です。ごめんね末代。


もう、どうにもならない気がするんですよ。私はラーメンをすすったら汁を飛ばすしかない人種だったというだけ。一度母に相談したら、「飛ばすと思ってるから飛ばすのっ」とお粗末な感情論を言われて終わりました。その調子でここまで生きてこれたなんて、母は超能力者かなにかなのでしょうか。


外食でなるべくラーメンを食べない、と決めたのですが、それでも食べたくなる日はあります。家で食べるラーメンと外で食べるラーメンは全然違いますからね。やっぱりお店のラーメンって美味しいのです。


たまに、紙エプロンが常備されているラーメン屋さんがあります。家系ラーメンのお店に多い印象ですが、あらゆるラーメン屋さんに採用されるべき画期的なアイデアだと思います。


汁を飛ばすのが怖い私にとって、紙エプロンは鎧のような安心感があります。「え、これ着けていいの?」「こんなん最強じゃん」と脳内にコメントが溢れかえり、なにも考えずにラーメンを食べる事ができるという快感に浸れるのです。鉄砲が伝来したときの日本人もこんな気持ちだったんでしょうね。


でもいざ食べたら、私は服を汚すんです。紙エプロンではカバーしきれなかった首元めがけて汁を飛ばし、紙エプロンを着けていない時と大差ない汚し方をして終わるのです。さすがにショックです。「首を守れない鎧ってどうなの」と紙エプロンを責めることもしますが、悪いのはどう考えても私です。


この前あんかけ五目ラーメンを食べたときは途中までは上手く食べれていたのですが、箸でつかんだうずらの卵を落とし、すごい飛ばし方をしました。もう「splash!」といった感じで、着ていたシャツが見るに堪えない姿になってしまいました。


こんなに汁を飛ばしている私ですが、「みんなはどうして飛ばさずに食べれているの?」とずっと疑問に思っています。単純に黒い服を来ているから汚れが目立たないだけ、という場合もありますが、白Tを着て勢いよくすすっている人も見かけます。そういう人はどうして飛ばしていないのでしょうか。


しかし、私は所詮「飛ばす側」の人間。いくら考えても「飛ばさない側」にはなれない運命なのです。ならば、「絶対に汁を飛ばさないラーメン」を誰かに考えてもらうまで待つしかありません。


まず考えられるのは「宇宙食」スタイルです。パウチ容器に入ったラーメンを、ウイダーのようにちゅーちゅー吸うのです。「やめろ気持ち悪い」と顔をしかめる方もいらっしゃると思いますが、以外とこれが大丈夫そうなのです。だって、「すする」という行為と「吸う」という行為はすっごく似てるじゃありませんか。口の動かし方としてはほぼ同じ。なら、パウチ容器から麺を吸ったとしても、それは普通にラーメンを啜って食べるのと同じ感覚のはずなのです。チャーシューや海苔をどうするかという問題はありますが、それは時の流れにまかせましょう。


 それともう一つ考えられるのは、「持ち運べる水」スタイルです。覚えてますか? 昔、「持ち運べる水」がネットで大流行したことを。「ペットボトルに代わる新たなエコ容器!」という謳い文句で、YouTuberがこぞって紹介していたのですが、あれで水を飲んでいる人は今まで1人も見かけませんでした。誰もエコになんて興味なかったんですね。


しかし、その「持ち運べる水」がラーメンに応用できる可能性はあります。「持ち運べる水」は、クラゲのような透明な膜に水が入っているのですが、なんとその膜は食用膜。そのまま口に入れることができるのです。ならもう、話は早いですね。食用膜に麺と汁を入れて、まるごと食べる。そうすれば汁は飛ばないのです。具材も、メンマくらいなら入れることは出来るでしょう。 


ラーメンの汁問題はこれらの技術を使えば解決できる可能性があるのです。笑われる運命にあった私の末代に差した希望の光。


しかし、もし実際にそのような「パウチラーメン」や「持ち運べるラーメン」が開発されたとしても、やっぱりラーメンはあのラーメン鉢からすすって食べるからこそ美味しいという話になる気がします。言い出しっぺの私も、よく分からない膜と一緒にラーメンを食べるくらいなら、いつも通りすすって服を汚しながら食べりゃいいなと思っています。


 



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